交通事故ゼロの社会を目指して
当社樹脂を採用いただいたデンソー様にお話を伺いました。

株式会社デンソー AD&ADAS技術2部 
須田 紘司様(中央)、北野 真司様(右)

ポリプラスチックス株式会社 
日本営業統括部第一部 臼井 大補(左)

2018年度の
活動ハイライト2

近年、自動車には燃費の良さや環境性能だけでなく、交通事故のない安心・安全な社会を実現するための安全性能も求められています。安全性能を備えた自動車には、車両と障害物との距離を検知して衝突を回避・軽減するための機能が必要となります。その機能を支える株式会社デンソー様のミリ波レーダーに、ポリプラスチックスのDURAFIDE® PPSが採用されています。

ミリ波レーダーの機能、求められる樹脂性能

ミリ波レーダーは、製品の正面から電波を照射し、前方車両や歩行者などに反射して返ってくるまでの時間によって車両と対象物との距離を検知するものです。車両に搭載されている衝突被害軽減システム(衝突が不可避な状況を検知して減速することで衝突被害を軽減する)や、車間距離制御システム(先行車との車間距離を一定に保って走行する)のセンサーとして使用されています。
ミリ波レーダーは、自動車前方のエンブレム裏などに設置されることが一般的で、日光やエンジンルームの熱などにさらされるため、レーダーの心臓部品のアンテナを筐体で包む形になっています。

このうち、ポリプラスチックスのPPSを使用している部品は、レーダーの正面に位置するレドームと呼ばれる箇所です。レドームの素材には、内蔵する電子部品を守るための強度が必要になるのと同時に、アンテナが電波を送受信できるよう電波を透過する性質も必要です。その他にもさまざまな性能が求められるため、金属では実現が難しく、これらをバランスよく備えているPPSを採用しました。

技術サポート・開発支援について

このように、ミリ波レーダーのレドームには非常に多くの性能が求められるので、設計開発時はそれぞれの物性データを揃える必要がありました。ポリプラスチックスには基礎的な物性データが既に揃っていたため、新たに取得する手間を省くことができ、開発スピードをあげることができました。また、とりわけ重要な特性である誘電性のデータについても、外部機関での詳細な実験データ取得の前に小回りの効いた迅速な対応をしていただきました。具体的には、我々が期待する特性に対し、DURAFIDE® PPSが合致しうるかどうかをポリプラスチックスの所有する設備を用いて事前に確認していただきました。そのおかげで非常にスムーズに設計開発を進めることができたと思います。
その他、レドームへのレーザー印字部分が日光や雨風で劣化してしまわないかを確認するための耐候性データも取っていただくなど、細かいところまで対応していただきました。高い技術力で、ニッチな要望にもご対応いただきミリ波レーダーの製品化を実現することができました。

今後の課題と展望

安心・安全な社会の実現のために、あらゆる車に搭載できるセンサーの開発が必要と考えています。そのためには、小型で軽量、かつ低価格なセンサーを実現する必要がありますが、現状ではまだ条件に合う素材はないため、レドーム以外のユニット部品の素材には金属を用いています。こうした部品についても樹脂化へのニーズは高まっています。

今後当社に期待すること

ポリプラスチックスには、引き続き小型化・軽量化を実現する材料の開発や提供を期待しています。これからもスピーディーな情報提供をしていただきたいと考えています。また、現在でも重視していることですが、今後も自動車設計においてはロバスト性が重要になります。ロバスト性とは、外的要因によって影響を受けにくい仕組みや性質のことです。自動車は多様な環境のもとで使用されるうえ、長い期間使っていただくものですので、外的要因の変化によって性能が劣化したり故障したりしないようにロバスト性を持たせることが重要です。PPSについても、実験やデータによって、例えば空気中の水分を樹脂が吸っても性能が安定していることや、エンジンルーム付近の環境下でも変形や強度の変化がないことも確認させていただき、まさにロバスト性が高い素材であるということで採用させていただきました。今後もこうしたロバスト性のある機能性樹脂の開発を期待しています。